世の中にはバレエを題材にした映画って結構あるのですね。ダンサーを追ったドキュメンタリーや、登場人物がバレエに目覚めていく物語など。今年観たバレエ映画を振り返ります。
『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』
一番最近に観たのがこの作品です。何も予習せずに観たので、タイトルからはボリショイで学ぶ子達のドキュメンタリーと思っていたのですが、完全なるフィクションでした。
最初の感想としては、共感できるところが何一つありませんでした。こう言ってしまうと元も子もない気がしてしまいますが、人種や文化が違うからでしょうか?どの登場人物にも感情移入することができませんでした。しかし、やはり白鳥の湖のシーンはとてもきれい。
一番好きだったのは、主人公が意を決して舞台袖に入っていくシーン。主人公に向かって微笑むスタッフや各々ウォームアップするダンサーなどがスローモーションで映ります。主役を踊る人からはこんなふうに世界が見えているかのなと想像すると面白く、そのスローモーションは踊るシーンを上回るほどの美しさと緊張感を感じました。
『ミッドナイトスワン』
ミッドナイトスワンを見に行ったのは10月のこと。もう一度見る?と自分に問いかけてみても、しばらくは答えが出そうにありません。凪沙の色っぽさと一果ちゃんのしなやかさ見たさに予告編は何度も見てしまうのですが、やはり凪沙の最終的な決断が、私にとっては消化できないものであることには変わりなく、なぜ?なぜ?と繰り返し考えてしまうので、全編見るにはまだ時間がかかりそうです。
ところで、「踊り」って上手に踊れる人がものすごく下手にも踊ることができると思うんです。つまり超絶上手い人でないと、初心者の踊りの様子を再現できないということ。服部樹咲ちゃんってバレエがすごく上手いから、習い立ての人の演技がすごくリアル。あと先生役の真飛聖さんの声も演技もすごく好きです。だからバレエシーンだけ抜き取って見たいかも(笑)。
全編もう一度見られる日はいつになるやら。ですが、今年一番心に深く刻み込まれた作品でした。
『パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち』
これはドキュメンタリーでした。パリ・オペラ座の舞台裏やダンサー達の練習風景が見られるのがとても嬉しいところです。
途中リハーサルか何かにやってきた子供達が「すごい!」とため息をつくのですが、実際に有名なダンサーや壮大な舞台装置が並ぶ舞台裏を見たらきっとそうなってしまうでしょうね。たとえ一瞬だけでもオペラ座の舞台で踊れるなんてすごく羨ましい。
エトワール達が練習しているスタジオも丸くて、低い丸い窓から差し込む陽の光がとてもきれいです。塔状の建物なのかもしれませんね。その下にはパリの街が広がっているのかと思うと、何もかもが絵になりそうでうっとりとしてしまいます。
ダンサー達もとてもきれいです。特にオニール八菜さんは日本人なので、どうしても目が惹きつけられてしまいます。本当は優しい性格なのでしょうが、『ラ・バヤデール』の舞台では女の戦いが繰り広げられていて豹変ぶりがとても面白い。踊りだけでなく、表現力がとても求められるものなんだと改めて思いました。
驚いた点もたくさんありました。ロパートキナは”超”がつくほどのベリーショートだったり、アニエス・ルテステュがトウシューズを脱いだときに中から出てきたのはただの綿。ダンサーも頂点までいくとトウパッドなんか使わないんでしょうか。確かに綿だと自分の足に合わせて調節できそうですが、特別な道具を用意しなくても身一つで最高のパフォーマンスができてしまうダンサーってやっぱりすごいなと感心してしまいます。
古典作品の他にコンテンポラリーのリハーサルをしているシーンもありますが、リズムや動きがとても難しそうだと感じたり、振付師やオーケストラともコミュニケーションを取らなければならないので、コミュニケーション能力も高くないとエトワールは務まらないんだろうな、などの発見もいろいろありました。
バレエ好きな人が見ても面白いし、バレエを習っている人にとっては壁にぶつかった時に見てみると、やる気がもらえるんじゃないだろうかと感じた作品でした。
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