一人暮らしを始めました。すると間も無くして部屋を借りたのは間違いだったかと思わせるような恐怖の出来事が。でも、それもすぐに安堵に変わり、今は平和な巣篭もりをやっています。
一人暮らしを始めました。
さて、長らくブログの更新が滞っておりましたが、この間、念願だった一人暮らしを始めました。
台湾での一人暮らし期間は長いとは言っても、台湾ではどこも家具家電付きの物件(「套房(タオファン)」)でした。14年間で3件の家に住みましたが、どの家でも入ったその日から難なく生活をスタートさせることができました。
反対に日本での一人暮らしは初めてです。
台湾での賃貸契約と言えば、大家さんと(往々にして手作りの)契約書交わして家賃払ってハイ!おしまい!と言う感じでしたので、日本の手続きの煩雑さに驚いてしまいました。でも、ライフラインの連絡や、家電の取り付け、家具の組み立てなどいろいろ勉強になりました。
最初は何もないガラーンとした部屋でしたが、購入した家具やら家電が徐々に届いてきました。
台湾では楽をして、家具屋さんに運送してもらったついでに組み立ててもらっていましたが、今回は自分でやらなければならない。
やってみて気がつきましたが、部品キットの中には六角レンチやスパナがついていて、女性一人でも組み立てられるようになっているんですね。
これで1万円以下ですから、お気に入りの家具を組み立てる楽しさも含めたら、(組み立てに楽しさを感じる人は)とてもお得な気がします。
こんな感じで好きな家具やカーテンをゆっくり選んでは、届いた物から組み立てていき、快適な新生活が始まる…予定でした。
この私にストーカー!?
さて、新生活が始まると同時に、パソコンやシールドランプなど自分では接続や取り付けが難しいものを、弟に夜に来て設置してもらっていました。
毎日少しずつ運んでもらい、付けてもらった後は、玄関で「ありがと〜!バイバーイ!」と見送ります。すると、インターホンが鳴りました。
インターホンの画面には何も映っていません。息を潜めて無視したら、それ以上は鳴らされなかったので、イタズラだったのかな?と思い、その日は気にせずに寝ました。
ただ、次の日も弟を見送り、弟が去った後に、インターホンが鳴りました。まるで私が一人になったのを見計ったようなタイミングで鳴るので恐ろしくなってしまいました。
またインターホンの画面は真っ暗。事情を話したら、弟が「カメラを手で隠しているんじゃない?」と言うので、どんな変態かとまた恐ろしくなってしまいました。
恐怖に慄いている私を安心させようとしたのか、弟は「NHKの集金じゃない?」とも言いましたが、NHKの集金はこの前に昼間に来たばかりだし、そんな夜遅くに変な話しです。
住み始めたばかりで、建物の構造や操作方法を理解してなかったのですが、ドアホンを押すと画面には映らないことがわかりました。ここのアパートの玄関はオートロックだし、ということは…
毎晩うちに来てるのは、同じアパートに住む住人だ!
また夜にドアホンが鳴ったので、今までは見る勇気がなかったけれど、恐る恐るドアの覗き穴から覗いてみました。
猫背の男がそこにいる!
もう泣きそうになりました。
その日はあまりの恐ろしさに実家に帰りました。また来るようであれば、管理会社に連絡してやめてもらうか、警察に連絡しようと思いました。
部屋を借りたばかりなのに、ヤバイ男がいて、やむなく解約!?とか、止めるように注意してもらったら逆ギレされて…なんて最悪の事態も想像しました。
いいこともあれば悪いこともある…やっぱり世の中はプラスとマイナスの均衡が取れているんだ…なんて人生の悟りまで開きそうでした。
なんだよ〜!ビビらせないでよ〜!
次の日は休日でしたが、朝から夜が来るのが憂鬱でした。
でも、昼頃にドアホンが鳴りました。
ドア穴から覗いてみると、背丈が昨日の男の人ぐらいの人が立っています。
勇気を出して「はい〜」と返事をしてみると、「向かいの○○です〜。最近引っ越してきたのでご挨拶に伺いました〜!」となんだか元気な声。
ドアを開けると、たくさんのビニール袋を手に持っています。
「どうぞよろしくお願いします。よかったら、これどうぞ!」とビニール袋の一つを差し出して、爽やかにニコニコとしています。
あれ、猫背じゃないし、なんか元気なただの男の子って感じ。
確信はありましたが、敢えて「昨日の夜もいらっしゃいました?」と聞いてみました。すると、「えっと〜。あ、はい!」との返事。
いや〜、なんだよかった。
夜に他人の家を訪ねるなんて非常識だよ!
どんだけ私がビビったと思ってるんだよ!
なんて叫びたかったけれど、ただ挨拶したいみたいな素直な感じでニコニコしてる彼を見たら、何も言えなくなりました。
この寂しいご時世、しかも人との接触を避けることが推奨されてる中で、一人暮らしのアパートでも引越しの挨拶に来てくれるなんてとても貴重な存在じゃないでしょうか。
「ならいいんです〜」と私の心は安堵に包まれ、自分の名は名乗りもせず洗剤を受け取って、部屋に引っこんでしまいました。
その後、洗剤を見るたびに、すごく失礼だったかもと反省し、スプラウト栽培セットにメモをつけて、ドアノブのところにかけておきました。
あの一件以来、その子には会ってないので、使ったかは知らないけれど。
平穏な暮らしを噛み締める
洗剤を受け取ってからというもの、ドアホンもインターホンも鳴らされなくなり、やっと平穏な時間が訪れました。
既に亡くなった祖父母が元気だった頃に使っていたテーブルと椅子でご飯をいただきます。
これらは、立派な北海道の民藝家具のようで、どっしりとした重厚感もあり、所々表面が少し剥げているところもあり、そこがなんだかとても愛おしく感じます。
やはりニトリの合板にシールを付けた家具とは違います。(ニトリのことを悪く言っているのではなく、どちらも違う良さがあっていいと言っています。笑)
小さい頃からこのテーブルと椅子を見ていたので、時間の流れを感じるし、懐かしくもあり、祖父母の存在が感じられるような気もします。
うちはテレビを置いていないので、音楽を聴いたり、動画を見てる以外は、とても静かです。
鳥の声を聴きながら、ご飯を食べたりお茶を飲んだり、とりわけボーッと座って(老人みたいですが)日向ぼっこをしている時にエネルギーが満ち足りてくる気がします。
ご飯食べて、作業して、寝る…人の暮らしはあまり変わってないのに、そして自然界はこんなに平和なのに、社会だけがとても曲がっているというか、異様な世界が作られている気がしてきます。
それも一度外に出れば、マスクをした人々、シャッターの閉まった店々、殺伐とした地下鉄の駅。すぐに現実に戻されるんですけれども。
自分の「巣」ができたことですし、静かで平和な時間を自分なりに噛み締めながら過ごしていきたいと思っています。
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